家庭菜園で人気のサニーレタスですが、「種から直播きで育てるのは難しいのでは?」と感じていませんか。実は、サニーレタスの栽培は直播きでも十分に可能で、いくつかのポイントを押さえれば初心者の方でも手軽に始められます。
この記事では、サニーレタスの直播き栽培について、年間の栽培カレンダーや具体的な種まき方法、最適な種まき時期を詳しく解説します。
さらに、プランターでの育て方、適切な株間の確保、冬の栽培における注意点、そして収穫日数の目安にも触れていきます。外葉からちぎる収穫のコツや、間引いた苗の活用法まで、家庭菜園の醍醐味を存分に味わうための情報を網羅しました。
サニーレタスの栽培|直播きの基本と準備

- 年間の栽培カレンダー
- 最適な種まき時期はいつ?
- 種まき方法は点まきと条まき
- プランター栽培のポイント
- 間引いた苗も美味しく食べよう
年間の栽培カレンダー

サニーレタスは、涼しい気候を好むため、主に春と秋の2シーズンで栽培するのが一般的です。栽培を始める前に、1年間の大まかなスケジュールを把握しておくと、それぞれの作業を適切なタイミングで行うことができ、成功率がぐっと高まります。ここでは、関東地方を基準とした一般的な栽培カレンダーの例をご紹介します。
作業 | 春まき | 秋まき | 備考 |
---|---|---|---|
土作り | 2月下旬~4月 | 8月中旬~9月 | 種まきの2週間前までに準備を終えます。 |
種まき | 3月中旬~5月上旬 | 9月~10月 | 発芽適温は15~20℃です。 |
植え付け(苗の場合) | 4月~5月 | 9月下旬~10月 | 本葉が4~5枚になった頃が目安です。 |
間引き | 種まきから1~2週間後 | 種まきから1~2週間後 | 成長に合わせて2~3回に分けて行います。 |
追肥 | 生育状況に応じて | 生育状況に応じて | 元肥入りの土なら基本的に不要ですが、葉色が薄い場合に与えます。 |
収穫 | 5月~6月 | 10月下旬~12月 | 種まきから約50~60日後が目安となります。 |
栽培カレンダーのポイント
このカレンダーはあくまで目安です。お住まいの地域の気候に合わせて、種まきの時期を調整することが成功の鍵となります。
例えば、寒冷地では春まきを4月以降に少し遅らせ、温暖地では秋まきの時期を11月頃まで長く取ることが可能です。主要な種苗会社のウェブサイトや、購入した種のパッケージに記載されている地域別の栽培暦を必ず確認し、最適なタイミングを見極めましょう。(参照:サカタのタネ「レタスの育て方・栽培方法」)
最適な種まき時期はいつ?

サニーレタスの栽培で最も重要なポイントの一つが、種まき時期の厳守です。サニーレタスは冷涼な気候を好む野菜で、発芽に適した温度は15℃~20℃とされています。
この「発芽適温」から外れた環境では、種がうまく芽を出さなかったり、発芽が不揃いになったりする原因となります。
具体的には、春まきの場合は日中の気温が安定して15℃を超えるようになる3月中旬から5月上旬、秋まきの場合は夏の厳しい暑さが和らぐ9月から10月頃が最適なシーズンといえます。春は桜が咲き始める頃、秋はお彼岸が過ぎて朝晩に涼しさを感じるようになった頃を目安にすると分かりやすいでしょう。
高温期の種まきは避けましょう
サニーレタスの種は、気温が25℃以上になると「休眠」という状態に入り、発芽が抑制されてしまう性質があります。これは、厳しい夏を越すための植物の自己防衛本能のようなものです。
特に真夏の直播きは失敗する可能性が非常に高いため、避けるのが賢明です。
どうしても夏に種まきをしたい場合は、種を湿らせたキッチンペーパーに包んで冷蔵庫で数日間保管し、発芽を促す「芽出し」処理を行ってから、日陰などの涼しい場所にまくといった特別な工夫が必要になります。
種まき方法は点まきと条まき

サニーレタスの直播きには、主に「点まき(てんまき)」と「条まき(すじまき)」という2つの方法があります。
どちらの方法にもメリット・デメリットがあるため、ご自身の栽培スペースや、どのように収穫を楽しみたいかに合わせて選ぶことが大切です。
種まき方法 | メリット | デメリット | こんな方におすすめ |
---|---|---|---|
点まき | ・株間を均等に確保しやすい ・種の使用量が少ない ・後の管理がしやすい | ・一箇所ずつまく手間がかかる ・間引き菜の量が少ない | プランターなどで株数を決めて計画的に育てたい方 |
条まき | ・作業が簡単でスピーディー ・たくさんの芽が出る ・間引き菜を多く収穫できる | ・種の使用量が多い ・株間が不揃いになりやすい | 間引きながらベビーリーフとしても長く楽しみたい方 |
点まき
点まきは、一定の間隔をあけて、1箇所に数粒ずつ種をまく方法です。株と株の間隔(株間)をあらかじめ決めてからまくため、風通しや日当たりを考慮した計画的な配置が可能です。
サニーレタスの場合、株間を15~20cm程度あけ、深さ1cm弱のまき穴を指で作り、そこに3~5粒の種をまきます。
条まき(すじまき)
条まきは、畑やプランターに支柱などを押し当てて直線状の浅い溝を作り、そこに種をまいていく方法です。作業が簡単で、一度にたくさんの種をまけるのが特徴です。
深さ1cm程度の溝を掘り、種が重ならないように1~2cm間隔でパラパラとまいていきます。家庭菜園では、間引き菜をたくさん収穫して長く楽しみたい場合に特に向いています。
覆土はごく薄くするのが鉄則!
サニーレタスの種は「好光性種子(こうこうせいしゅし)」と呼ばれ、発芽に光を必要とする珍しい性質があります。そのため、種をまいた後に土を厚くかぶせすぎると、光が届かずに発芽率が著しく下がってしまいます。
覆土は、種が隠れるか隠れないか程度のごく薄い量に留めてください。「ふるい」を使って薄く土をかけると均一にできます。土をかけた後は、手のひらで優しく押さえて種と土を密着させ、水やりで種が流れないようにしましょう。
プランター栽培のポイント

サニーレタスは、ベランダなどの省スペースでも手軽に栽培できるため、プランターでの栽培に非常に適しています。プランターで元気に育てるためには、地植えとは少し違ういくつかのポイントを押さえておきましょう。
まず、プランターのサイズ選びが重要です。
サニーレタスは根を比較的浅く張る性質があるため、深さは15cm以上あれば十分ですが、土の乾燥を防ぎ、根が十分に張れるスペースを確保するため、ある程度の土量が入る幅広のものがおすすめです。一般的な幅65cmの標準プランターであれば、2~3株をゆったりと育てることができます。
用土は、市販の「野菜用培養土」を使用するのが最も手軽で失敗がありません。元肥(もとごえ)と呼ばれる初期生育に必要な肥料や、土の水はけを良くする成分がバランス良く配合されています。
水はけは特に重要で、プランターの底には必ず鉢底石を2~3cm敷き詰め、その上に土を入れるようにしてください。これにより、根腐れのリスクを大幅に減らすことができます。
プランターの置き場所にも注意が必要です。サニーレタスは日当たりと風通しの良い場所を好みますが、夜間に街灯などの光が長時間当たり続けると、季節を勘違いして花芽ができてしまう「トウ立ち」の原因となり、葉が硬くなり味が落ちてしまいます。日中は日当たりが良い、夜は暗くなる場所を選んであげましょう。
間引いた苗も美味しく食べよう

直播き栽培の大きな楽しみの一つが、間引き菜の収穫です。種をまくと、たくさんの芽が密集して出てきます。
これらをそのまま育ててしまうと、栄養や日光の奪い合いが起こり、どれも大きく育つことができません。そのため、生育の良い株を残して余分な苗を取り除く「間引き」という作業が必要不可欠です。
この間引いた若い苗は、決して無駄なものではありません。ぜひベビーリーフとして、その日の食卓で味わってみてください。
柔らかくて苦味が少なく、栄養価も豊富です。実際に、文部科学省の食品成分データベースによると、レタスの葉(葉レタス)は結球レタスに比べてβ-カロテンを約8倍多く含んでいるとされており、若い葉には栄養が凝縮されていると考えられます。
間引きのタイミングとコツ
間引きは、株の成長に合わせて数回に分けて行います。焦って一度に抜いてしまうと、残した株が風で倒れやすくなるためです。
1回目:本葉が1~2枚の頃。双葉の形が悪いものや、極端に小さいものを中心に、葉と葉が軽く触れ合う程度に間引きます。
2回目:本葉が4~5枚の頃。生育の良い株を残し、株間が5~7cm程度になるように調整します。
最終的に、次の見出しで解説する適切な株間になるようにします。この間引き菜を楽しめるのは、苗からではなく種から育てる直播き栽培ならではの醍醐味といえるでしょう。
サニーレタスの栽培|直播き後の管理と収穫

- 適切な株間の確保が重要
- 冬の栽培で気をつけること
- 目安となる収穫日数
- 収穫は外葉からちぎるのがコツ
- サニーレタス栽培を直播きで楽しむコツ
適切な株間の確保が重要

前述の通り、間引き作業を経て、最終的にサニーレタスが大きく成長するためのスペースを確保することが重要です。この株と株の間のスペースを「株間(かぶま)」と呼び、これが生育に大きく影響します。
サニーレタスを健康に、そして葉を大きく育てるためには、最終的に15cm~20cmほどの株間を確保するのが理想的です。
大人の手のひらを広げたくらいのスペースが目安です。株間が狭すぎると、葉が密集してしまい、風通しが悪くなります。風通しが悪いと、湿気がこもりやすくなり、灰色かび病やべと病といった、カビが原因の病気が発生しやすくなります。また、アブラムシなどの害虫の隠れ家にもなりかねません。(参照:農林水産省「病害虫・雑草の情報と対策」)
間引きの際の注意点
間引きを行う際は、残したい株の根を傷つけないように最大限の注意を払いましょう。無理に引き抜こうとすると、土の中で絡み合った隣の株の根まで一緒に傷つけてしまい、成長が止まってしまうことがあります。
これを防ぐためには、間引く苗の根元を清潔なハサミで切り取る方法が最も安全で確実です。土が乾いている時よりも、水やり後など少し湿っている時に作業する方が、根への負担をより軽減できます。
冬の栽培で気をつけること

サニーレタスは比較的寒さに強い野菜ですが、冬越しさせて栽培を続ける場合はいくつかの防寒対策が必要になります。
特に、強い霜が降りたり、気温が0℃以下になったりすると、葉の細胞が凍結して傷んでしまう可能性があるため、注意が必要です。
地植えの場合は、「不織布(ふしょくふ)」を直接株の上にかける「べたがけ」や、ビニールをアーチ状の支柱にかけて覆う「トンネル栽培」が効果的です。
不織布は通気性がありながら保温効果も期待でき、霜が直接当たるのを防ぎます。ビニールトンネルは保温性が高いですが、日中に内部が高温になりすぎることがあるため、裾を少し開けて換気する工夫が必要です。
プランター栽培の最大のメリットは、移動が簡単なことです。日中は日当たりの良い屋外に出して光合成を促し、気温がぐっと下がる夜間や霜注意報が出ている日は、風の当たらない軒下や玄関先、室内に取り込むことで、寒さから守ることができます。この一手間をかけるだけで、冬でも長く新鮮なサニーレタスを収穫できます。
目安となる収穫日数

サニーレタスは、生育が比較的早い野菜で、種まきから収穫までの期間が短いのも家庭菜園での魅力の一つです。栽培を始める際に、いつ頃から収穫できるのかを把握しておくと、計画が立てやすくなります。
一般的な目安として、種まきから収穫が始まるまでの日数は、およそ50日~60日、つまり約2ヶ月です。もちろん、これは栽培する季節や気候条件によって多少前後します。例えば、気温が安定している春や秋は生育がスムーズに進みますが、日照時間が短く気温も低い冬場は、成長がゆっくりになり、収穫まで70日以上かかることもあります。
収穫の大きさの目安
日数だけでなく、株の大きさで判断することも大切です。株全体の大きさが直径20~25cm程度になり、葉の枚数も十分に増えてきたら、収穫開始のサインです。
株ごと収穫しても良いですし、次の項目で解説する方法で長く楽しむこともできます。採り遅れると、葉が硬くなって食感が悪くなったり、苦味成分が増えたり、さらにはトウ立ちの原因になったりするため、最も美味しい食べ頃を逃さずに収穫することを心がけましょう。
収穫は外葉からちぎるのがコツ

サニーレタスは、玉レタスと違って中心部が固く結球しない「リーフレタス」の一種です。この結球しない特性を最大限に活かすことで、一度植えれば長期間にわたって収穫を楽しむことができます。
収穫方法には、株元からナイフなどで切り取って株ごと一気に収穫する方法と、食べる分だけ外側の葉から順にちぎって収穫する方法の2通りがあります。家庭菜園で特におすすめなのが、後者の「かきとり収穫」と呼ばれる方法です。
株の中心にある「成長点」と呼ばれる新しい葉が出てくる部分を残し、その周りにある成熟した外側の葉から必要な分だけを収穫します。
これにより、中心の若い葉はそのまま成長を続けるため、一株から2ヶ月以上にわたって何度も収穫が可能となり、常に新鮮な葉を食べることができます。収穫する際は、葉の付け根を指でつまみ、丁寧にちぎるか、清潔なハサミで切り取りましょう。
この方法なら、毎日のサラダに少しだけ加えたい、サンドイッチに一枚だけ挟みたい、という時にもとても便利ですね。ただし、中心の成長点がなくなったり、中心部が上に伸びてくる「トウ立ち」の兆候が見られたりしたら、味が落ちる前に株ごと収穫するのがおすすめです。
サニーレタス栽培を直播きで楽しむコツ

この記事では、サニーレタスの直播き栽培について、種まきから収穫までの流れと各工程でのコツを詳しく解説しました。最後に、成功のための重要なポイントをリスト形式でまとめます。
- サニーレタスの栽培は初心者でも直播きで手軽に始められる
- 最適な種まき時期は春(3月~5月)と秋(9月~10月)の2シーズン
- 発芽適温は15℃から20℃で、25℃以上の高温期は避ける
- 種は光を好む「好光性種子」のため覆土はごく薄くするのが鉄則
- 種まき方法は計画的な「点まき」と簡単な「条まき」を使い分ける
- プランターは深さ15cm以上のもので市販の野菜用培養土を使うと簡単
- 直播きの醍醐味は間引いた栄養豊富な苗をベビーリーフとして味わえること
- 間引きは株の成長に合わせて2~3回に分けて行う
- 最終的な株間は15cmから20cm確保して病害虫の発生を防ぎ風通しを良くする
- 冬の栽培では不織布やビニールトンネルで霜対策を行うことが重要
- プランター栽培の場合は夜間に室内へ取り込むと凍結から守れる
- 収穫までの日数の目安は種まきから約50~60日
- 株の大きさが直径20cmを超え、葉が茂ってきたら収穫開始のサイン
- 収穫は外側の葉からちぎる「かきとり収穫」だと長期間楽しめる
- 中心部が伸びるトウ立ちの兆候が見えたら早めに株ごと収穫する
これらのポイントを丁寧に押さえれば、初心者の方でも美味しいサニーレタスを家庭で十分に育てることができます。ぜひ、直播き栽培にチャレンジして、採れたての新鮮な味と香りを存分に楽しんでください。